リビングが広いマンション東京の設計傾向:間取りと空間活用
東京のマンション事情とリビング重視の背景
東京の分譲・賃貸マンションでは、専有面積に対してできるだけ広いリビングを確保しようとする設計傾向が見られる。背景には、テレワークの浸透や在宅時間の増加、家での趣味・学習・子どもの遊びなど多目的な活動が1つの空間に集約されるようになったことがある。
従来は「寝室の数」や「収納量」が間取り検討の中心になりやすかったが、最近は「家族が集まる時間と場所」を重視する考え方が強まり、LDK(リビング・ダイニング・キッチン)に面積を厚く配分する設計が選択されやすくなっている。特に東京のように住戸面積が限られやすい都市部では、同じ専有面積でも「個室を増やすか」「リビングを広くするか」のトレードオフがよりシビアになり、結果として「個室は必要最小限、リビングを最大化」という思想のプランが目立つ。
また、共用ラウンジやコワーキングスペースなど、マンション全体で生活機能を補完する施設が計画されるケースも増え、各住戸内では「プライベート感のあるリビング」を確保しながら、一部機能を共用部に委ねる構成が採用される場合もある。こうした流れも、リビングを中心とした住戸設計を後押ししている。
面積配分と代表的な間取り傾向
リビングが広い東京のマンションでは、専有面積のうちLDKに30〜40%前後を充てる設計が目立つ。例えば、60㎡台の住戸でLDKが18〜20帖前後とされるパターンや、70㎡台で20帖超のLDKを確保し、個室は2室に抑えるようなプランがその一例である。
代表的な間取り傾向としては、次のようなパターンが多く見られる。
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2LDK+広いLDK型
個室は主寝室と子ども部屋(または書斎)など2室に限定し、LDKを広く取る構成。将来の家族構成の変化に応じて、リビングの一角を仕切って3室目を確保できるよう、扉や可動間仕切りを設ける設計が採用されることもある。 -
1LDK+大空間リビング型
単身者やDINKS(子どもをもたない共働き世帯)を想定し、寝室は最小限としつつ、LDKを「食事・仕事・趣味・来客」まで対応できる大空間として設計するプラン。キッチン位置や収納配置を工夫し、家具レイアウトの自由度を高める意図がある。 -
スライディングドアで一体化する3LDK型
一見すると3LDKだが、リビング横の個室との間に大きな引き戸を設け、開閉で「広いLDK」と「3LDK」の両方に切り替えられるパターン。日中は戸を開放してリビングを拡張し、夜だけ個室として仕切るような時間帯別の使い分けが想定されている。
いずれのパターンでも、「居室数を抑えつつ、LDKの面積と形状を優先する」という設計思想が共通している。
広いリビングを生むプランニング手法
限られた面積の中でリビングを広く見せるために、設計上の工夫が多用されている。その主なポイントは以下の通りである。
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廊下面積の圧縮
玄関から各室への動線をできるだけ短くまとめ、廊下を兼ねたホールやファミリークローゼットを採用するなどして、「歩くだけのスペース」を減らす設計がよく見られる。削減した面積をリビングに振り分ける考え方である。 -
行き止まりの少ない回遊動線
キッチン〜ダイニング〜リビング〜廊下がぐるりと回れるような回遊動線を設けると、実際の帖数以上に空間が広く感じられやすい。子どもの動きや家事の行き来もスムーズになり、生活上のストレス軽減につながるとされる。 -
オープンキッチン・ペニンシュラキッチン
壁付けキッチンから対面式キッチンへの移行は広く浸透しているが、その中でも吊戸棚や壁を最小限に抑え、リビング・ダイニングと視線が抜けるように計画することで、空間の一体感が生まれる。カウンターをダイニングテーブルと連続させる設計も多く、食事・作業・収納の役割をまとめる狙いがある。 -
天井高・サッシ高さの工夫
法規上の制約の中で、天井高をわずかにでも高く確保したり、ハイサッシやワイドスパンの窓を採用したりすることで、視覚的な「抜け」をつくる設計が行われている。特に東京では隣接建物との距離が近くなりやすいため、窓位置やガラスの高さで開放感を補う工夫が重要になる。
広いリビングの多目的活用アイデア
リビングが広い東京のマンションでは、一つの空間に複数の機能を共存させる想定でプランニングされることが多い。代表的な活用イメージとして、次のようなゾーニングが挙げられる。
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ワークスペース・スタディコーナー
リビングの一角にカウンターデスクや可動棚を設け、在宅勤務や子どもの宿題スペースとして機能させる計画が増えている。完全な個室書斎を設けるよりも面積効率が良く、家族との距離感も保ちやすい。 -
キッズスペース
床材を一部だけ変えたり、収納の高さを低く抑えたりして、玩具や絵本が集約される小さな「遊び場」をリビング内に確保する設計も見られる。視線が届く位置にあることで、家事をしながら子どもの様子を把握しやすい配置になる。 -
趣味・フィットネスコーナー
ヨガマットが広げられるだけの余白や、楽器・コレクションを展示する壁面など、趣味のためのエリアをリビングに組み込む考え方もある。広いリビングでは、ソファとテレビの「くつろぎ空間」と、趣味・運動の「アクティブ空間」を分けてレイアウトできる余地が生まれる。 -
来客対応スペース
ダイニングとソファスペースをゆとりをもって配置できるリビングでは、来客時に食事とくつろぎを分けて案内することも想定されている。ワークスペースが視界に入り過ぎないよう、収納扉やパーテーションで「片付けやすい目隠し」を設ける設計も行われる。
収納計画と生活動線の工夫
リビングが広いだけでは、物があふれてしまうと逆に狭く感じられるため、収納計画と動線計画が重要になる。設計面での代表的な工夫は次の通りである。
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ウォークスルークローゼット・ファミリークローゼット
玄関〜廊下〜リビングの途中に大きめの収納を設け、衣類・日用品・掃除機などをまとめてしまえるプランが増えている。リビング内に細かい収納家具を置かなくて済むようにすることで、床面をすっきり保つ狙いがある。 -
リビング壁面収納
テレビボードと一体になった壁面収納や、天井までの造作棚が計画されると、視線が上方向に抜け、空間の一体感も保ちやすい。オープン棚と扉付き収納を組み合わせることで、「見せる収納」と「隠す収納」をバランスよく配置する設計がよく見られる。 -
家事動線の短縮
キッチン〜洗面室〜バルコニー(物干しスペース)をできるだけ直線的に、あるいは回遊形でつなぎ、家事の行き来でリビングを横切る距離を短くする設計が採られることもある。家事動線が整理されると、リビングが「通路」になりにくく、落ち着いた居場所として機能しやすい。 -
玄関との視線コントロール
玄関からリビングが丸見えにならないように、廊下を折れ曲がらせたり、視線を遮る壁や収納を配置したりする計画も多い。来客時に生活感が直接伝わりにくく、リビングをプライベートな空間として保ちやすくなる。
共用部計画・周辺環境との関係
東京のマンションでは、住戸内リビングだけでなく、共用部との役割分担を前提とした設計も行われている。例えば、エントランスラウンジやワークラウンジが計画されている場合、住戸内リビングは「家族中心のくつろぎ空間」と位置付けられることが多い。
また、敷地条件が厳しい都市部では、向きや階層により眺望・日当たりが大きく変わるため、リビングの配置と窓の方向が重要な検討テーマになる。南向きにこだわらず、東向き・西向きリビングでも、窓の形状やバルコニーの奥行き、隣接建物との距離などを調整することで、採光とプライバシーの両立を図る設計も見られる。
さらに、周辺の公園や商業施設、教育施設などの環境とリビングの関係も意識される。低層階では街路樹や通行人との距離の取り方、高層階では風の強さや眺望の抜け方など、リビングの快適性に影響する外部条件を踏まえて窓計画やバルコニー形状が検討される。
設計傾向を読み解くポイント
リビングが広いマンションの設計傾向を理解する際には、単に帖数の大小だけでなく、次のような観点から図面や説明を確認すると特徴が把握しやすい。
- LDKの面積比率と形状(縦長か横長か、柱・梁の出っ張りがどこにあるか)
- 廊下・ホール部分の面積と、そこに収納や機能が組み込まれているかどうか
- リビングと隣接する個室の関係(引き戸で一体化できるか、将来間取り変更の余地があるか)
- キッチンのタイプ(壁付け・対面・アイランド)と、ダイニングとの距離感
- ワークスペースやキッズスペースの想定位置が示されているか
- 窓の大きさ・高さ・向き、バルコニーとのつながり方
- ファミリークローゼットやリビング収納の有無と配置
これらの要素を総合的に見ることで、同じ「広いリビング」と表現される間取りでも、実際の使い勝手や将来のライフスタイル変化への対応力にどのような違いがあるかを、より具体的にイメージしやすくなる。東京のマンション設計では、単なる帖数の拡大だけでなく、「多様な生活シーンを受け止めるリビング」を軸にした空間構成が重視される傾向が続いている。